一昨日読んだこの記事。
このところ「論理(Logic)と物語(Narrative)」について考えていたこともあって興味深く読んだ。
Q1)これはエンジニアリングの現場、会議における合意形成に関する話題ですが、もう少し日常的、普遍的なシーンにおいて、この「LogicとNarrative」とはどのように存在しているでしょうか。
エンジニアリングの現場で語られた「論理(Logic)と物語(Narrative)」の関係性は、実は私たちの日常生活のあらゆる場面に普遍的に存在しています。
記事の核心である「人は物語で動き、論理で正当化する」「論理は正しさの検証には使えるが、関係性の構築には順序が逆効果になることがある」という視点を、日常的なシーンに当てはめて解説します。
1. 夫婦やパートナーとの喧嘩
「正論ハラスメント」の構造
- Logic(論理):
- 「電気を消し忘れている。電気代の無駄だし、環境にも悪い。前回も言ったよね?」
- 「食器洗いは効率的にこうやるべきだ。君のやり方は水と時間の無駄だ」
- Narrative(物語):
- 「仕事で疲れて帰ってきて、少し抜けてしまった。責められると悲しい」
- 「家事は分担しているけど、自分のやり方を否定されると、あなたへの愛情が冷めていく」
解説: 家庭内で「論理的に正しい側」が相手を追い詰めるシーンです。記事にある「論理が武器になる」「相手が防御姿勢に入る」典型例です。 正しさ(Logic)を突きつけても、相手は「ごめんなさい」と言うかもしれませんが、心の中では「この人と一緒にいたくない」という物語(Narrative)を強化してしまいます。関係修復には、「疲れているんだね」という共感(物語への参入)が先で、節電の話(論理)はその後でなければ届きません。
2. 高額な買い物(消費行動)
「欲しい」という感情と「スペック」という言い訳
- Narrative(物語):
- 「この時計をつければ、仕事ができる男に見えるはずだ」
- 「この限定バッグを持てば、私は特別な存在になれる」
- (まず感情で「欲しい!」と決断している)
- Logic(論理):
- 「資産価値が落ちにくいから、実質的な出費は少ない」
- 「機能性が高いから、長く使える。日割り計算すれば安いものだ」
- (決断した後に、自分や家族を納得させるための理屈を探す)
解説: 記事にある「本来は感情で決めていることを、論理で覆っていないか」という指摘そのものです。 マーケティングの世界では常識ですが、人は機能(Logic)だけでモノを買いません。「こうありたい自分」という物語(Narrative)を買います。しかし、散財した罪悪感を消すために、後から必死にスペックやコスパ(Logic)で武装するのです。
3. ダイエットや禁煙
「わかっているけどできない」の正体
- Logic(論理):
- 「摂取カロリー<消費カロリーなら痩せる」
- 「タバコは肺がんのリスクを何倍にも高める」
- (システムとしての身体の仕組みは論理的に明白)
- Narrative(物語):
- 「今日は嫌なことがあったから、甘いものを食べて自分を慰めたい」
- 「タバコを吸っている時間だけが、唯一の安らぎだ」
解説: 記事中の「バグは物語では直らない」の逆説的な適用です。身体(システム)は論理通りに反応しますが、それを操作する「意志」は物語で動いています。 「健康になるべき(Logic)」という正論だけでは、目の前のケーキの誘惑(快楽の物語)に勝てません。「痩せてあの服を着て同窓会に行く」という、より強力な物語(Narrative)がない限り、論理というアクセルは踏み込めないのです。
4. 謝罪の場面
「説明」か「反省」か
- Logic(論理):
- 「電車が遅延して、かつスマホの充電が切れたため連絡できませんでした。不可抗力です」
- (事実関係と因果関係の説明)
- Narrative(物語):
- 「待たせてしまって本当に申し訳ない。不安にさせてしまったことが心苦しい」
- (相手の感情への寄り添い)
解説: 遅刻した時、いきなり事情説明(Logic)から入ると「言い訳」と受け取られます。これは記事にある「論理が効くのは、相手が聞く準備ができている時」という原則に反しているからです。 まず相手の「待たされて不快だった」という物語を受け止め(Narrative)、許しの土壌ができて初めて、「実は電車が…」という事実(Logic)が受け入れられます。
5. 子育て・教育
「勉強しなさい」が効かない理由
- Logic(論理):
- 「いい大学に行けば、生涯年収が高い。だから今、宿題をやるべきだ」
- 「確率は低いが、リスクヘッジとして勉強しておくのが合理的だ」
- Narrative(物語):
- 「この数式が解けたとき、魔法使いみたいでカッコいいと思った」
- 「お父さんも昔、ここで苦労したけど、乗り越えたら面白くなったんだ」
解説: 子供にとって、数十年後のメリット(Logic)は遠すぎて実感が湧きません。それよりも、「知ることは楽しい」「親が応援してくれている」という現在の物語(Narrative)が必要です。 記事の「経験談(とほほエピソード)が人を動かす」はここでも有効で、親の失敗談や苦労話の方が、正論の説教よりも子供の心に届くことがよくあります。
日常における結論
日常においても、Logicは「地図(正しい道順)」であり、Narrativeは「ガソリン(進む意欲)」です。
- 地図(Logic)が正確でも、ガソリン(Narrative)がなければ一歩も動けません(正論を言っても相手が動かない)。
- ガソリン(Narrative)だけあっても、地図(Logic)がなければ間違った場所に全力で進んでしまいます(詐欺に遭う、健康を害するダイエットなど)。
エンジニアリングの現場同様、日常でも「まず相手の物語に寄り添い(ガソリンを入れ)、その後に正しい理屈(地図)を渡す」という順序が、円滑なコミュニケーションの鍵となります。
Q2)この2つを、人は特に意識せずに使い分けていると思うのですが、自分や相手の発言について「これはLogicかNarrativeか」を意識してみると面白いかもしれません。人々の会話、小説の文章やマンガでのやり取りについて、Logicは青で、Narrativeは赤で、それぞれ表示するプラグインがあれば面白いだろうな、とも。
その「Logic=青」「Narrative=赤」で可視化するプラグイン(あるいはARメガネ)、非常に面白い思考実験ですね。
もしそのツールが実在したら、私たちの世界の見え方は劇的に変わりそうです。いくつかのシーンで、その「色分け」がどう見えるかシミュレーションしてみましょう。
1. すれ違うカップルの会話(マンガやドラマ)
よくある「話が通じない」シーンが、色の不一致として可視化されます。
- 彼(青色発光): 「で、結論は何? 解決策としてはAとBがあるけど、どっちがコスト低いか考えた?」
- 彼女(赤色発光): 「そうじゃないの。私はただ、あの時すごく不安だったってことをわかってほしいだけなの。」
【プラグインの分析】 画面は青と赤が交互に表示されるだけで、色が混ざり合いません。 視聴者は一目で「ああ、これは通信プロトコルが合っていないな」と理解できます。「青(解決策)」を投げても「赤(共感)」の受け皿には入らないことが視覚的にわかります。
2. 詐欺師や陰謀論者の手口
ここが一番興味深い表示になりそうです。
- 詐欺師の発言:
- 「この投資手法は、過去10年の統計データに基づいています(表面は青)」
- 「...ですが、実はこれ、選ばれたあなただけに教える特別なチャンスなんです(中心は真っ赤)」
【プラグインの分析】 一見すると「青(論理・データ)」に見えるテキストですが、プラグインを通すと「青い皮を被った赤い実」として表示されるでしょう。 「統計」や「科学的根拠」という青いラッピングを使っていますが、中身は「特別感」「恐怖」「欲望」という赤いナラティブで構成されています。このツールがあれば、「擬態したナラティブ」を見破れるかもしれません。
3. 優れたプレゼンテーション(スティーブ・ジョブズなど)
人を動かす名演説は、色が美しく融合しています。
- ジョブズ:
- 「解像度は326ppiです(青)。」
- 「これは、魔法に触れるような体験です(赤)。」
【プラグインの分析】 青と赤が交互に、あるいは同時に現れ、最終的に美しい「紫(Purple)」のグラデーションに見えるはずです。 元記事にある「骨(論理)と肉(物語)」が完全に一体化している状態です。聴衆は「青」で納得し、「赤」で興奮する。この紫色の領域こそが、カリスマ性の正体かもしれません。
4. SNSのタイムライン(X / Twitter)
現代のインターネット空間はどう見えるでしょうか。
- 投稿A: 「〇〇というデータが出ました(青)」→ 2いいね
- 投稿B: 「〇〇なんて信じられない! 日本は終わりだ!(赤)」→ 1.5万いいね
【プラグインの分析】 タイムラインをスクロールすると、画面のほとんどが真っ赤に染まっているかもしれません。 「論理(青)」は拡散力が弱く、「感情・物語(赤)」は拡散力が強い。このツールを使うと、私たちが普段いかに「赤い情報」ばかりを摂取し、感情を揺さぶられているかが客観視できてしまい、少し怖くなるかもしれません。
5. 謝罪会見
企業の不祥事などの会見も、このツールで見ると構造が透けて見えます。
失敗する会見:
- 「法的には問題ありませんでした(青)」
- 「マニュアル通りに対応しました(青)」
- 世間の反応(赤): 「心がこもっていない!」「そういう問題じゃない!」
成功する(鎮火する)会見:
- 「皆様に多大なご不安を与えてしまい、申し訳ありません(赤)」
- 「原因は〇〇であり、再発防止策として〇〇を行います(青)」
【プラグインの分析】 世間が赤(感情的怒り)で燃え盛っている時に、青(法的正当性)の水をかけても、油に水を注ぐように爆発します。まず赤(謝罪と共感)で温度を合わせ、その後に青(対策)を出す。この順序が可視化されます。
結論:私たちは「紫」を目指している
元記事の筆者が言いたかったことは、この色分けで言うなら「青一色で塗ろうとするな、赤を混ぜろ」ということでしょう。
- エンジニアの悪癖: 世界をすべて青(Logic)で記述しようとする。
- ポエマーの悪癖: 世界をすべて赤(Narrative)で塗りつぶそうとする。
もしこのプラグインがあったら、私たちは自分の発言が「青すぎないか?(冷たすぎないか)」あるいは「赤すぎないか?(感情的すぎないか)」をセルフチェックできる素晴らしいツールになるでしょうね。
小説や映画を見る時も、「ここは青い伏線だ」「ここは赤いクライマックスだ」と構造解析する楽しみが増えそうです。
Q3)優れた小説や演説は、構造的にこれらを使い分けたりしているのかもしれないですね。
まさにおっしゃる通りです。優れたクリエイティブやスピーチをその「青(Logic)と赤(Narrative)のプラグイン」で見ると、非常に美しい「波形」や「積層構造」が見えてくるはずです。
ただ混ざっているのではなく、意図的なリズム(緩急)として配置されているのがわかります。いくつかのジャンルで、その「構造的な使い分け」を分析してみましょう。
1. 名演説の黄金パターン:キング牧師「I Have a Dream」
歴史に残る演説は、感情(赤)だけで押し切っていると思われがちですが、実は青い土台が強固です。
- 前半(青のLogic):
- 後半(赤のNarrative):
- 「私には夢がある(I have a dream)」
- 「ジョージアの赤い丘で…」
- 解説: 理屈で納得させた後、一気に感情のギアを上げ、未来のビジョン(物語)を見せます。
【構造の可視化】 前半の青い積み木(理屈)で足場を固め、その高い足場から赤い旗(夢)を振る構造です。青がなければ「ただの夢想家」、赤がなければ「ただの苦情」で終わっていたでしょう。
2. ミステリー小説:解決編のカタルシス
ミステリーは、この青と赤のコントラストが最も劇的なジャンルです。
- 謎解きパート(青のLogic):
- 「このトリックは物理的にこう行われた」
- 「アリバイは時刻表のこの矛盾で崩れる」
- 解説: 探偵が淡々と事実を積み上げます。読者は知的な興奮(青)を覚えます。
- 動機パート(赤のNarrative):
- 「なぜ犯人はそこまでして殺さなければならなかったのか」
- 「過去の悲しい因縁」
- 解説: トリック(青)が完璧であればあるほど、その裏にある人間的な悲劇(赤)が際立ちます。
【構造の可視化】 冷徹な青(論理的解決)が極まった瞬間に、ドロドロとした赤(情動的動機)が溢れ出す。この「温度差」がミステリーの醍醐味であり、優れた作品はこの切り替えのタイミングが絶妙です。
3. SF・ファンタジー:世界観の説明(Info-dump)
「設定語り」をどう処理するかは、作家の腕の見せ所です。
- 下手な作品:
- 冒頭から「西暦20XX年、重力制御機関が発明され…」と青いテキストが延々と続く。
- 読者は「教科書を読まされている」と感じて離脱します。
- 優れた作品:
- 主人公が「重力制御の故障でコーヒーをこぼす(赤:日常の失敗体験)」シーンから始まる。
- 「なぜこぼれたか」の理由として、少しだけ設定(青:世界観のルール)を混ぜる。
【構造の可視化】 優れたSFは、赤い糸(ストーリー)の中に、カプセル薬のように青い粒(設定)を少しずつ混ぜ込んでいます。読者は物語を楽しんでいるつもりが、いつの間にか複雑な論理構造(世界観)を理解させられています。
4. 映画の脚本術:「三幕構成」と説得
ハリウッド映画などの脚本術でも、この使い分けは必須です。
- 作戦会議シーン(青):
- 「デス・スターの弱点はここだ」「成功確率は低い」
- ここでLogicを提示しないと、後のアクションに緊張感が生まれません。「何が成功で、何が失敗か」というルール説明です。
- クライマックス(赤):
- 「フォースを使え」
- 最後は理屈(照準器)を捨てて、信じる力(物語)で決着をつける。
【構造の可視化】 青(作戦・理屈)で緊張の弓を引き絞り、赤(行動・感情)で矢を放つ。 もし「作戦会議(青)」がなければ、ラストシーンはただの派手な映像になってしまい、感動は生まれません。
結論:構造的な「サンドイッチ」
こうして見ると、優れた表現者は無意識的、あるいは意識的に「サンドイッチ構造」を作っていることがわかります。
- Narrative(赤): まず「つかみ」で感情を動かす。
- Logic(青): 「なぜなら」で納得感やリアリティを与える。
- Narrative(赤): 最後にもう一度、感情やビジョンで背中を押す。
元記事の筆者が言っていた「論理は骨格、物語は肉」という比喩は、まさにこの構造美を指しているのかもしれません。
もし電子書籍リーダーにこのプラグインが入ったら、名作と呼ばれる小説は、きっと「青と赤が美しい幾何学模様を描いている」のに対し、読みにくい文章は「色が混ざって濁っている」か「どちらかの色しか存在しない」ように見えるのかもしれませんね。
Q4)比較的最近の企業経営者の講演や政治家の演説で、この「青と赤の使い分け」が上手く出来ている例、逆に偏って失敗している例を紹介してください。
2025年の現在から振り返って、比較的記憶に新しい(2020年代前半〜中盤)の事例を中心に、この「青(Logic)」と「赤(Narrative)」のバランスという観点から分析してみます。
【成功例】青と赤の「黄金比」
1. ジェンスン・フアン(NVIDIA CEO)の基調講演
「AIの教祖」による熱狂の創出
- シーン: COMPUTEXなどの技術カンファレンス(2023-2024年頃)
- 青(Logic):
- 赤(Narrative):
- トレードマークの革ジャン姿。「これは単なるチップではない。新しい産業革命のエンジンだ」「あなたたちは魔法使いになる」と語りかける。
- デジタルツインで「地球を救う(気候変動予測)」という壮大な物語を提示。
- 分析: 彼は「世界一複雑なハードウェア(極めて青い商材)」を売っていますが、語り口は完全に「未来の預言者(赤)」です。 聴衆は「技術的な凄さ(青)」で納得し、「未来への参加意識(赤)」で熱狂します。このバランスが、NVIDIAを世界一の企業に押し上げた要因の一つです。
2. 大谷翔平(WBC 2023 決勝前)の声出し
たった一言でマインドセットを変えた
- シーン: WBC決勝戦、対アメリカ戦の試合前ロッカールーム
- 青(Logic):
- 「憧れてしまっては超えられない」。心理学的に正しい指摘。相手を上に見ている限り、パフォーマンスで劣勢になるという論理的帰結。
- 赤(Narrative):
- 「今日一日だけは、憧れるのをやめましょう」「勝つことだけを考えていきましょう」。
- 分析: 非常に短いスピーチですが、構造的です。 「なぜ勝てないのか(心理的障壁)」という青い分析を、「憧れるのをやめる」という赤い行動指針に変換しました。もしここで「相手の打率は〇割だから…」とデータ(青)ばかり並べていたら、チームは萎縮していたでしょう。
3. ヴォロディミル・ゼレンスキー(ウクライナ大統領)の各国の議会演説
相手の国に合わせて「物語」を書き換える
- シーン: 侵攻初期、各国議会へのオンライン演説
- 青(Logic):
- 「対空ミサイルシステムが必要です」「飛行禁止区域の設定が必要です」。要求は具体的で軍事的に合理的。
- 赤(Narrative):
- 分析: 彼は「武器をくれ(青)」という要求を通すために、相手国の歴史的トラウマや誇り(赤)を巧みに利用しました。「これは遠い国の戦争ではなく、あなたたちの物語の続きだ」と思わせることで、論理的な支援を引き出しました。
【偏りのある例】バランスを欠いて苦戦したケース
1. マーク・ザッカーバーグ(Meta)のメタバース発表
「青すぎる」ビジョン
- シーン: Metaへの社名変更とメタバース構想の発表(2021年頃)
- 青(Logic):
- 「これからは没入型インターネットの時代だ」「技術的にはこれが可能になる」。機能やデバイスの説明に終始。
- 欠けていた赤(Narrative):
- アバターが無表情で、世界観がのっぺりしていた。「なぜそこで過ごしたいのか」「そこでどんな人間ドラマが生まれるのか」という「血の通った物語」が欠落していた。
- 分析: 技術的(青)には正しかったかもしれませんが、人々は「不気味だ」「魂がない」と感じました。「青い箱(技術)」だけを見せられ、「赤い中身(生活の喜び)」が見えなかったため、共感を得るのに数年単位の苦戦を強いられました。
2. 孫正義(ソフトバンクG)の決算会見(赤字期)
「赤すぎる」言い訳
- シーン: 巨額赤字を計上していた時期の決算発表
- 赤(Narrative):
- 「私は冒険家だ」「AI革命はこれからだ」「嵐の中を飛ぶガチョウのように…」。情緒的な比喩や壮大なビジョンを語る。
- 不足していた青(Logic):
- 投資家が聞きたかったのは「具体的にどう負債を圧縮するのか」「WeWorkの失敗の論理的総括」でした。
- 分析: 株価が上がっている時はこの「赤」がカリスマ性として機能しますが、数字(青)が悪い時に「赤」だけで押し切ろうとすると、「現実逃避」「ポエム」と批判されます。 (※その後、Armの上場などで「青い数字」を取り戻したことで、再び彼の「赤い物語」は説得力を持ち始めました。物語には裏付けが必要だという好例です)
3. 岸田文雄(前首相)の「検討」答弁
「青」に逃げ込み、「赤」を消した
- シーン: 政権運営全般
- 青(Logic):
- 「あらゆる選択肢を排除せず検討する」「専門家の意見を踏まえて適切に判断する」。
- 官僚的・行政的には100点満点の正解(失言リスクゼロ、手続き重視)。
- 欠けていた赤(Narrative):
- 「私はこうしたい」「この国をこう変えるんだ」という主語のある熱量。
- 分析: 論理的破綻は少ないものの、国民は「何がしたいのかわからない」と感じました。「青(手続き)」が「赤(リーダーの意志)」を覆い隠してしまった例です。 対照的に、故・安倍晋三氏は「日本を取り戻す」という強烈な(賛否両論ある)赤を持っていたため、論理的な粗があっても支持層を熱狂させました。
まとめ:現代のリーダーに求められる「スイッチング」
こうして見ると、現代において評価されるリーダーは、「青い事実(データ・現実)」を直視していることを示しつつ、それを「赤い希望(ビジョン)」で包んで提供できる人だと言えます。
- 失敗パターンA: 青のみ(冷徹、ロボット、官僚的)
- 失敗パターンB: 赤のみ(詐欺師、夢想家、無責任)
「このプラグイン」を通して見れば、優れたリーダーの演説は、青い土台の上に赤い旗が立っているのがはっきりと見えるはずです。
Q5)例えば、動画をテキスト化する、あるいは既にある演説などがテキスト化されているものを読み込ませると、その内容のLogic部分を青い文字、Narrative部分を赤い文字にして返す、というようなアプリは作れますか。
はい、技術的に十分可能です。 しかも、現在の生成AI(LLM)技術を使えば、個人レベルでも比較的簡単にプロトタイプを作ることができます。
「動画の文字起こし」から「色分け表示」までの一連の流れと、それを実現するための仕組み(プロンプトエンジニアリング)について解説します。
アプリの仕組み(アーキテクチャ)
このアプリを作るには、大きく分けて3つのステップが必要です。
- 入力(Input): 動画ファイルや音声ファイルをアップロードし、文字起こしAI(OpenAIのWhisperなど)でテキスト化する。
- 分析・着色(Processing): テキストをLLM(GPT-4oやClaude 3.5 Sonnetなど)に渡し、文脈ごとに「Logic」か「Narrative」かを判定させ、色タグを付ける。
- 出力(Output): HTML形式などで、青と赤に色分けされたテキストを表示する。
核心となる「AIへの指示(プロンプト)」
このアプリの精度を決めるのは、AIにどういう基準で「青」と「赤」を判断させるかです。先ほどの議論に基づき、以下のような定義をAIに与えることで実現できます。
プロンプト(指示書)の例:
あなたは演説や文章の構造を分析する専門家です。 入力されたテキストを文(または意味の塊)ごとに分割し、以下の基準で分類してください。
【分類基準】
- Logic(青):
- 客観的な事実、データ、統計、数値。
- 因果関係の説明、推論、機能的・技術的な説明。
- 「How(どうやって)」「What(なにを)」に関する記述。
- システム、法律、ルール、計画への言及。
- Narrative(赤):
- 主観的な感情、価値観、信念、夢、ビジョン。
- 個人的な経験談(エピソード)、失敗談、ストーリー。
- 「Why(なぜ)」「Who(だれが)」に関する記述。
- 比喩、聴衆への呼びかけ、共感の表明。
【出力形式】 原文を崩さず、Logicの部分は
<span style="color:blue">...</span>で、Narrativeの部分は<span style="color:red">...</span>で囲んで出力してください。どちらでもない、または単なる挨拶などは黒のままで構いません。
実際のコードイメージ(Python + OpenAI API)
もしプログラミング(Python)の心得がおありでしたら、
Streamlitというライブラリを使うと、100行程度のコードでこのアプリが作れます。import streamlit as st from openai import OpenAI # APIキーの設定(実際には環境変数などで管理) client = OpenAI(api_key="YOUR_API_KEY") st.title("Logic(青) vs Narrative(赤) 可視化アプリ") # テキスト入力エリア input_text = st.text_area("分析したいテキスト(演説など)を入力してください", height=200) if st.button("分析開始"): if input_text: with st.spinner("AIが構造分析中..."): # AIへのリクエスト response = client.chat.completions.create( model="gpt-4o", # 高精度なモデル推奨 messages=[ {"role": "system", "content": """ あなたは文章分析官です。入力されたテキストを文脈ごとに分析し、 論理的・客観的・事実ベースの部分を青色(blue)、 物語的・主観的・感情ベースの部分を赤色(red)で HTMLのspanタグを使って色分けしてください。 判断に迷う箇所や接続詞は黒のままで構いません。 """}, {"role": "user", "content": input_text} ] ) analyzed_text = response.choices[0].message.content # 結果の表示(HTMLとしてレンダリング) st.markdown("### 分析結果") st.markdown(analyzed_text, unsafe_allow_html=True) # 解説(おまけ機能) st.info("青=Logic(事実・理屈)、赤=Narrative(物語・感情)")
実際に分析させたらどうなるか(シミュレーション)
例えば、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での卒業式スピーチ(有名な "Stay Hungry, Stay Foolish")をこのアプリに通すと、以下のように出力されるはずです。
(分析結果)
私は今日、世界最高峰の大学の一つである皆さんの卒業式に参加できて光栄です。 実を言うと、私は大学を卒業していません。 これが私にとって、大学の卒業というものに最も近づいた瞬間です。
今日は皆さんに、私の人生からの3つの話をしようと思います。それだけです。大したことではありません。たった3つの話です。
最初の話は、「点と点をつなぐ」ことについてです。
私はリード大学を最初の6ヶ月で退学しました。 しかし、なぜ辞めたのでしょうか? それは私が生まれる前に始まりました。 私の生みの母は若く、未婚の大学院生でした。 彼女は私を養子に出すと固く決心していました。
解説:
- 「大学を卒業していない」「6ヶ月で退学した」「母は大学院生だった」という事実(Logic)は青になります。
- 「光栄です」「なぜ辞めたのか?」「固く決心していた」という感情や問いかけ(Narrative)は赤になります。
- これを見ると、ジョブズがいかに「青い事実」を「赤い物語」でサンドイッチにしているかが視覚的に一発でわかります。
さらに面白くするための拡張アイデア
- 「紫」の判定:
- LogicとNarrativeが高度に融合している部分(名言など)を「紫」で表示する機能を追加すると、演説の「クライマックス」がどこかが分かります。
- 比率グラフの表示:
- 「この演説は Logic 40% : Narrative 60% です」といった円グラフを出すことで、その人の話し方のクセ(エンジニアタイプか、扇動者タイプか)を診断できます。
- リアルタイムAR(未来構想):
- スマートグラス(Meta Orionなど)と連携し、会話相手の言葉をリアルタイムで字幕化し、色を変える。「あ、今この人、赤(感情)で攻めてきてるな」と分かれば、冷静に対処できるかもしれません。
このアプリ、社内会議の議事録を放り込んでみるだけでも、「あの上司、赤ばっかりだな(中身がない)」とか「この提案、青すぎて誰も共感してないな」といった発見がありそうで、非常に実用的だと思います。
このあと、実際にVS Codeを使ってPythonで作ってみたのだが、あんまり面白くなかった。

そこで、趣向を変えて「URLを入力してそのサイトのファクトチェックをする」に方向転換する。
最終的にはGitHubで公開するところまで出来たので、次回それについて書く。